「……うん、分かった。ここはお前に任せるよ」
 
ミカエルの言葉に頷いたウリエルは、剣を構えると俺に向かって来る。しかしそのスピードは、他の誰よりも早い物だった。
 
一回瞬きをした時にはもう、彼女の姿は俺の直ぐ目の前まで迫っていた。

「――っ!」
 
そして直ぐに振り下ろされた剣を、俺は七星剣を使って防いた。

「僕のスピードに着いて来れたのは、お前が初めてだな」

「へ〜、それは褒めているのか?」

「ああ、褒めてやっているんだ。エアが認めたトトが、まさか僕のスピードに追いつけないなんて事はないだろうからな」
 
その上から目線の口調は相変わらずだな……。

だが、そのスピードに遅れを取るような俺でもない。
 
俺は七星剣を使ってウリエルの剣を跳ね返す。

そして直ぐに彼女との距離を縮めて七星剣を振り下ろした。

しかし――

「ふっ」

「っ!」
 
彼女は軽い笑みを浮かべると、直ぐにその場から姿を消した。

「は、速い!」
 
ウリエルはさっきよりもスピードを上げたのか、俺の目に留まらない速さで動いて行く。

これはウリエル自身が自分の肉体を強化して、動いて見せているものなのか……。いや、違うな。
 
これはきっと――

「そう言えば八本の内の魔剣の中で、こんな魔剣が存在していたな」
 
その言葉に動きを止めたウリエルは、軽く目を細めるとじっと俺を見てきた。

「今のところ行方が分かっていないのは、宇宙の力を司り、ありとあらゆる星々の力を借りる事が出来る魔剣コスモスと、肉体を強化する事でどんな物よりも、ましてや光よりも早く移動し見えない斬撃をくらわせる事が出来る魔剣ライトニング」
 
俺はウリエルの手の中にある魔剣を睨みつけた。

「そいつ、魔剣ライトニングだろ? エーデルの息子の」
 
その言葉にウリエルの手の中にあった魔剣は、元の姿に戻るとウリエルの肩の上にちょこんと座った。

「よく分かったね。さっすが、エアが認めたトトだね」

ライトニングは小さな小竜の姿のまま、嬉しそうに翼をパタパタとして見せた。
 
エーデルから前に話を聞いた事があった。
 
白竜ライトニングは生まれつき、光の精霊の加護を大量に持って生まれてしまったせいで、肉体の成長が止まってしまっていたと。
 
そしてそんなライトニングは、エアの初めての友達だったらしい。

共に暮らし共に旅をして、最後はエアのためにエクレールと一緒に、光の精霊の加護の力を使って、黒い粒子を浄化して息を引き取ったと。

「何でエアの友達だったお前が、そんな奴らのところに居るんだ? お前さ、仕えるべき主を見誤っていないか?」

「え〜? そんなことないよ? ウルとミカすっごく優しいんだよ? オイラのこと、家族だって言ってくれたもん」

「へー……家族ね」