「……悪いな、オフィーリア。俺はお前のためなら、何でもすると決めたんだ。ずっと前にお前が俺なんかのために、その身を犠牲にしてくれたように、今度は俺自身がお前の為にこの身を捧げる番なんだ」
 
俺は決して振り返らず、真っ直ぐ前だけを見据えて、後ろに居る彼女に語りかけるように言った。

「……そろそろ、行くな。オフィーリア」
 
そう言って、その場から瞬間転移をしようとした時だった。
 
洞窟の入口の方から、俺に拍手を送る音が聞こえてきた。

その拍手に俺は眉を寄せた。

「本当に君は素晴らしい人だ。さすが、彼女が君をトトとして選んだだけありますね」
 
洞窟の入口から姿を現した二人組を見て、俺は鋭い目を浮かべた。

「まだここに居たのかよ? てっきりもう帰ったと思っていたけど?」

「いえ、直ぐに帰るつもりだったのですが、君は必ずここへやって来ると思っていたんで、待っていたんですよ」

「それはそれはご苦労だったな。だったら今直ぐ――死ね」
 
俺は右目に魔力を注いでミカエルとの距離を縮めた。

しかしミカエルは直ぐ目の前に神の守りを張った。

そんな俺よりも早い瞬発力に、さすがの俺も目を見張った。

「敵を目の前にして猪突猛進になる君は、昔と全然変わっていないんですよ。その事には少なからず
嬉しいとは思いますが、少しは成長したところを見たいものですね」

「うるせぇな。まだ始まったばっかりだろ!」
 
俺は後ろに大きくジャンプをして右手を前に構える。そんな俺の姿にミカエルは首を傾げた。

「おや? いつも側に居たあのお二人は、今日は居ないんですね」

「ちょっと用事があって今は居ないだけさ。でもな、お前なんか魔剣がなくても余裕で殺して見せるさ」
 
俺は右手の中に七星剣の内の一本の剣を握った。

そして左手にはその内のもう一本を握り、背後に残りの五本を配置させる。
 
そんな俺の姿をミカエルの後ろで見ていたウリエルは、剣を鞘から抜くとミカエルの前に立った。

「兄上。ここはお下がりください」