「覚悟しろよ……ミカエル!」
 
俺は自分の中で高ぶり続ける負の感情を抑えて、ゆっくりと息を吐いた。
 
きっとあいつは俺に時間がないってことも分かっているんだろう。

虹の花を手に入れてオフィーリアが生き返った後の事も、きっとあいつは全部分かっている。

だから気に入らないんだ。

「チッ……」
 
軽い舌打ちをした俺は、直ぐに優しい笑みを浮かべてオフィーリアの方へと振り返った。

「ごめんな、オフィーリア。変なところを見せちまって」
 
そう彼女に言葉を投げかけるが、返事が返ってくることはないと知っている。

しかし今は何でも良いから言葉にしたかった。

「オフィーリア……。魔剣はちゃんと見つかっている。守護者だって集まって来ている。だから心配する事はないんだ。だから……」
 
俺は俺なりの言葉でアレスにはヒントを送った。

あいつなら必ず気づいてくれると信じてな。
 
アレスは俺のあんな言葉で落ち込むような奴じゃないって事くらい分かっている。

本当に俺とは違ってあいつは純粋な奴だ。
 
あいつの心から大切な物を守る為に強くなりたいと言う純粋な思いは、必ずあいつに応えてくれる。

だから今後を託す事が出来るんだ。
 
それにアレスの側には仲間と呼べる者たちが居る。

俺と違ってあいつは一人じゃない。

だからアレスはどんなに高い壁にぶちあたっても、仲間となら乗り越えていけるんだ。

「ごめんな……オフィーリア」
 
俺は小さくそうポツリと呟いた。

「これしか……方法がなかったからさ」
 
お前は悲しむかもしれない。

怒って俺を引っ叩くかもしれない。

でもそれでも構わない。

俺はお前が笑って幸せに暮らせるならそれで構わないんだから。

「これはそのためのシナリオなんだ」
 
もう後戻りは出来ない。

準備は着々と進んでいる。

後はお前を生き返らせる事が出来れば、全てが上手く行くんだ。
 
俺は最後にオフィーリアの顔を見つめて彼女に背を向けた。

そして――

『やめて!』

「――っ!」

 一瞬、そんな言葉が頭の中を過った気がした。

しかし直ぐに俺はその考えを払いのける。