アレスたちの事をサファイアに任せた俺は、オフィーリアが居る洞窟へと瞬間転移した。

そして直ぐにし水晶へと駆け寄った。

「はあ……はあ」
 
乱れる息を整えながら、俺は指先で水晶に触れた。

「良かった……」
 
水晶が傷つけられた後はどこにも見られない。

となるとやっぱり守護魔法が働いた事になる。
 
俺は水晶から少し離れて、地面に張っていた守護魔法の魔法陣を出現させた。

すると魔法陣の術式を見ると、侵入したであろう者の人数が描かれていた。

「二人だと?」
 
たったの二人だけで俺の目くらましの魔法を破って、この洞窟に侵入したって言うのか? 

そんな事が可能な奴なんて……。

「いや……居るじゃないか」
 
俺は右目をカッと見開いて不気味に赤く光を放たせる。

俺の目くらましの魔法を解いて、ただの興味本位でここへやって来る奴なんて一人しかいねぇ。

「ミカエル……!」
 
俺の中の負の感情が高ぶり、右目がバチバチと赤い火花を散らす。

あいつにはずっと関わらないようにしてきた。

ずっとニコニコと笑顔を浮かべている姿は一見、とても優しく穏やかな人だと思えるだろう。

だがあいつの腹の中は常に黒い陰謀が渦巻いている。

そんなあいつの近くになんて、自分から進んで行こうだなんて思えない。
 
でもあいつはこの三百年、特に行動を起こすこともなく魔法協会大司教の椅子に座り続けながら、俺の様子をずっと傍観していた。

それだけでもタチが悪いって言うのに、あいつは今度ここへと侵入した。
 
いったいどんな目的でここへ来たのかは知らないけど、ただの興味本位なんて言う言い訳を聞く気はサラサラない。
 
だってあいつは俺がこれからやろうとしている事を全て把握している。

だから虹の花を手に入れて、それを餌にして俺を誘き出そうとしているんだから。

本来だったらそんな手に引っかかるつもりはないが、今回だけはその罠にハマってやる。

俺の命よりも大事な場所へと勝手に足を踏み入れたんだからな。