ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

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「あら、私たちが行くまでもなかったみたいね、ソフィア」

「そう、だね」
 
元の姿に戻っているアレスを見たソフィアは、少しホッとしたように微笑んでいた。

そんな彼女の横顔を見つめながら、私はエクレールとアレスの会話を思い出していた。

「辛い時は仲間に頼っても良い、しかし仲間ばかりに頼ってしまっていたら、お前は強くはなれない。大切な物は何一つ守れない。ね」
 
確かにエクレールの言う通り、うまい具合に言葉を言い換えればそう聞こえるかもしれない。

まあ、当の本人が本当にアレスにそう言いたかったのかは別問題だけど、今は当たらずも遠からずってところかしらね。
 
それにあの人がアレスに期待しているって言うのは本当なのだから。

しかし時空の割れ目を塞ぐくらいなら、ブラッドの力だけでも事足りるはず。
 
でも彼はアレスたちに修行をつける事によって、彼等に時空の割れ目を塞がせようとしている。

それはもし黒い粒子が進行して来たとしても、アレスとエクレールの力があれば、黒い粒子は浄化出来るし、アレスたちが黒い粒子を浄化している間に、ソフィアたちが時空の割れ目を塞げば良い。でもいったいどうやって?
 
それに私はアレスから、ブラッドは魔剣アムールを使って黒い粒子たちを斬り捨てていたという話を聞いている。

だから別にアレスたちの力がなくても、ブラッド一人いれば残りの時空の割れ目を塞ぐことなんて直ぐに済む話だ。
 
しかし彼はそうしようとはしない。それはいったい何故なのか?

「やっぱり……何か引っかかるのよね」
 
今の段階ではそれが何なのかはまだ掴めない。

もうしばらく様子を見るしかないかしらね? それにこのタイミングでわざわざ海の中からやって来た、魚人族の長のセイレーンの存在も気になる。
 
彼女はブラッドと交わしたとある約束を果たすために、この地へやって来たと言っていた。

でもそれが何なのかは分かっていない。

二人を少し観察して分かった事と言えば、同じ守護者同士でも少なからず連絡は取っているように思えた。

しかしそこまで親しくもなさそうだったけど、彼女はきっとオフィーリアと言う人にも会っているはずだ。
 
オフィーリアと言う女性はエアの末裔でありながらも、最初に魔剣集めの旅に出た人なのだから。

だからまず魔剣を集めるなら、行方が分かっているところから手を付けようとするはず。