ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

「彼は本当に強い人だと思うのですよ。亡き恋人と交わした約束を果たすために、ずっと孤独でここまでやって来たのですから。あんな人はそうはいません。きっとそんな彼を支えていたのは、オフィーリアと共に過ごした記憶だけだったと思うのです」

「……」
 
あの人は誰にも弱みを見せて来なかったのだろうか? 

自分が弱っているところを見られてしまったら、必ず同情の言葉を掛けられてしまうと思っているから。
 
ブラッドさんは知っているんだ。

きっと一回でも同情の言葉を掛けられてしまえば、今の自分は必ずそれに縋ってしまうことに。
 
だからあの人は俺と違って、誰にも頼らず生きて来たのかもしれない。

でも俺にはそんなこと……。

「しかし、アレス。あなたは仲間に頼ったって良いのですよ?」

「えっ?」

「確かに彼は【仲間が側に居る事を当たり前のように思うな】と、キツイ言葉をあなたに突きつけましたが、【決して仲間に頼るな】とは一言も言っていないのですよ」

「っ!」
 
言われてみればそうだ……。

あの時ブラッドさんは、【仲間がずっと側に居る事を当たり前のように思うな】と言っただけで、【決して仲間に頼るな】とは言っていなかった。

という事は――

「【辛い時は仲間に頼っても良い、しかし仲間ばかりに頼ってしまっていたら、お前は強くはなれない。大切な物は何一つ守れない】と、言いたかったのではないのでしょうか?」

「……エクレールさん凄いですね。俺にはそんな読解力ないですよ」
 
もしエクレールさんの言う通り、ブラッドさんが俺にそう伝えたかったんだとしたら、俺はこんなところで座っている場合じゃないだろう! 

いや、その前にあの人の言った言葉についてちゃんと考えられていれば、こんなに悩まずに済んだはずだ。