ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

「事実でしょ? それにみんなどうしちゃったのよ? 各々練習していた時には、ちゃんと出来ていたじゃない? 特にアレスなんか重症よ。あの人の言う通り、この二ヶ月の修行が全て無駄になっているし、体は出来上がっているのに、本人の心も出来上がっていないんじゃ、修行の第二ステップなんか、クリア出来ないんじゃないのかしら?」

「……っ!」
 
テトの言葉に私は何も言えず目を逸した。

ブラッドさんはそれぞれ私たちに的確な助言をくれた。

言い方はキツかったかもしれないけど、それでも自分では分からないところを指摘されて、次にどうすれば良いのかと考える事が出来る。

だから次に向けた準備がしやすくなった。
 
しかしアレスは、ブラッドさんからやって来たこと全てを否定されてしまった。

何のアドバイスもなく、突き放すように彼はどこかへ行ってしまった。

「どうしてブラッドさんは、私たちよりもアレスにあんなキツイ言い方を……」
 
ふと、その言葉を小さく呟いた時だった。

「それはあの人が、アレスに期待しているってことなんじゃないのかしら?」

「えっ?」
 
テトの言葉に私は足を止めた。
 
ブラッドさんがアレスに期待をしている? それってどういうこと?

「詳しいことは私にも分からないけど、あの人がアレスに魔剣を託したのだって、ただ適任者がアレスだったからってわけでもなさそうに思えるのよ」

「つまり、他に何か目的があるとか、期待している事があるってことだよね?」

「そうよ。まあ、それがいったいどういう物なのかは、現時点では分からないけど、一つ思い当たる節があるとすれば、彼が言っていた時空の割れ目の事じゃないかしら?」