ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

そして目を瞑ってオフィーリアが居る洞窟の中の景色を、脳裏へと映し出した。しかし洞窟の中は、特に変わった様子は見られなかった。
 
私の氷結の力が破られたわけでもないし、ブラッドの様子がおかしかった事に、オフィーリアは関係していないのか? 

しかしあいつがカレンでも分かるくらいに自分を乱す事なんて、今まであっただろうか? 

それにカレンはブラッドの様子がおかしかった事に気づいていたが、私は特にブラッドからは何も感じられなかった。
 
【今まで通りのブラッド】を見ていたつもりだった。

「どこかおかしかったか? 詳しく言えるか?」

「……なんて言ったら良いのか分からないけど、先生から一瞬だけ殺気に似た感情を感じた気がするの」

「……殺気だと?」

「気のせいだとは思うんですけど……。ちょっと気になってしまって」
 
殺気……。

あいつが一瞬でも殺気に似た感情を表に出してしまったという事は、やはりオフィーリアの居る洞窟で何かあったという事になる。

だからブラッドは直ぐに、この場からあの場所へと移動したのか……。
 
まさか誰かがあの洞窟へ侵入したって言うのか?

「サファイアは何か心当たりはありますか?」

「……いや、分からないな」

「そう、ですよね」
 
カレンは私の言葉を聞き届けると、ソフィアたちの方へと歩いて行ってしまった。

その背中を見届けた私は、忘却の山がある方角へと視線を送った。

そして三百年前にあいつから持ちかけられた話を思い出した。