ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

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「すみません……アムール様」

「気にするなレーツェル。それよりも体の方は大丈夫なのか?」
 
俺たちは森の中へと移動して涼しい木陰の下に座り込んだ。

そして俺は少し息を荒くしているレーツェルの体をそっと抱きしめた。

「……平気です。ちょっと、目眩がしただけなので」

「……そうか」
 
腕の中で俺に身を委ねてくれる彼女の左手に、自分の左手を絡めながら俺はレーツェルの額に軽い口づけを落とした。
 
レーツェルは時々こうしてよく体調を崩すようになった。

それはこの旅を始めて、数百年経った頃から急に起こった事だった。

もちろん原因は分かっている。

「レーツェル……もう少しだから頑張れるか?」

「は、い。ブラッドのため……オフィーリアのためにも、私は最後まで頑張るつもりです」
 
俺たち魔剣は定期的に主から魔力を貰うことがある。

それは戦いで消費してしまった己の魔力を補う目的があり、また傷ついた体を癒やすためでもある。
 
だから俺はブラッドから定期的に魔力を供給してもらっている。

しかし主のいないレーツェルはそれが出来ないんだ。

代わりに俺がこうして、ブラッドから貰った魔力をわけてやることで何とか戦えてはいるが、やはり本来の力は十分に発揮する事が出来ないでいる。

オフィーリアが戻って来ればこの問題は解消されるんだが……。

「アムール様……私は大丈夫です。ですから、どうかブラッドをお願いします」

「レーツェル?」

「今のブラッドは……何かに焦っているように見えるんです」
 
その言葉に俺は軽く目を見張った。そして視線を横に移動させた。

やっぱりレーツェルもそう思うのか……。
 
俺から見ても今のブラッドは何かに焦っているように思えた。
 
ブラッドの奴は上手く隠しているようだけど、ずっとあいつの側に居た俺たちには分かる。

もう直ぐオフィーリアに会えると言うのに、そのことで焦っているようには思えない。

ならば、あいつはいったい何に焦っていると言うんだ?