ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

「お前の言う大切な人を守るため、と言う願いを成し遂げるにためには、お前は誰よりも強くなくてはいけないんだよ。そんな中途半端なまま力を振るっても、大切は者なんて誰も守れやしない……」

「で、でも……俺には!」

「【仲間が居てくれる】って、言いたいのかよ?」

「っ!」
 
ブラッドさんはそう小さく呟くと、瞳に映していた拳に力を込めた。

そして左目を細めると、鋭い視線を俺に送った。

「確かに今は仲間が側に居てくれる。お前は一人じゃない。だからたとえお前が倒れてしまっても、その手を引っ張ってくれる人が居る。だが……ずっと仲間が側に居てくれると言う事を、当たりのように思うな!」
 
その言葉に俺は目を見張り、そして気付かされた。
 
ブラッドさんの言う通り、たとえ俺が倒れてしまっても、隣にはソフィアやカレンやロキが居てくれる。

だから大丈夫だと……思ってしまっていたんだ。

「別にその考えを悪く言っているんじゃない。だが敵と刃を交えた時、必ず一人になる時だってある。自分よりも先に、側に居てくれた仲間が倒れてしまう事だってある。そんなとき、頼れる人が居なくなってしまったら、お前がみんなを守るしかないんだ。だからお前は……誰よりも強くなくてはいけない」

「……っ」

「【大切な人を守るために強くなりたい】と言うのは、言い換えれば【大切な人を守るためにも、強くあり続けなければならない】と言う言葉にもなる。大切な人を守るために強くなりたいって言うのは、そういう事なんだよ」
 
ブラッドさんの言葉に俺は悔しくて何も言えず、両手で拳を作って力を込めた。

「そんな中途半端な願いを抱いている今のお前じゃ、大切な人なんて誰一人守れやしないぞ」
 
ブラッドさんはそれだけ言うと、瞬間転移の魔法を使ってその場からどこかに移動してしまった。そして残された俺は、ただその場に立ち尽くすことしか出来ず、悔しくて歯を噛み締めた。