ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

「そう落ち込むなって。第二ステップは始まったばかりなんだ。時間はまだある。だから俺はその時間の中で、お前の良いところや悪いところを絶対に見つけてやる。だから顔を上げろよ」

「……ブラッドさん」
 
ブラッドさんの言葉にソフィアは小さく頷いてみせる。

その姿にブラッドさんも頷くと、彼は最後に俺に視線を動かした。

「じゃあ次……アレス」
 
するとブラッドさんは、さっきと違ってとても冷たい目で俺を見てきた。

その目を見た俺の体に震えが走り、体に鳥肌が立つ。
 
あの目つき……俺は一度だけ見た事があった。

そう、あの目はヨルンにも向けていた【同情のない目】だった。

しかしなぜ、そんな目で俺を見てくるのだろう。

「アレス……お前の修行はアルが見ていたはずだよな」

「は、はい……」
 
ブラッドさんは俺の前まで歩いて来る。そして自分の人差し指の指先を俺の顔に向けてきた。

「全然だめだ。魔剣の力をまるで使いこなせていないじゃないか。アルに修行を見てもらっておきながら、その姿はなんだ?」

「っ!」
 
その言葉が俺の中で大きく響いたと同時に、心臓が大きくはねて頬に汗が流れ落ちた。

「体はエクレールの魔力を長時間まとえるように上手く鍛えられてはある。しかし雫を上手くコントロール出来ていない事によって、体は出来上がっていても力を長時間まとう事が出来ずにいる」

「……っ」
 
きっと俺に同情のない目を向けてくるのは、俺に容赦なく現実を叩きつけるため。

そしてこの二ヶ月で会得したはずの力を、まるで扱えていないことへの再認識。
 
おそらく俺はこの中で誰よりも、この二ヶ月の修行を無駄にしてしまっているんだ。

「お前さ……何のために強くなりたいんだっけ?」

「そ、それは……大切な人を――」

「――守るため……だろ?」
 
ブラッドさんは俺に向けていた人差し指を下ろすと。

今度は自分の手のひらを瞳に映す。