ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

「カレン。お前はサファイアたちと考えた戦術を上手く組み込んで使ってきているが……所々穴があるぞ。しかもその穴を突かれたら、今の戦術は直ぐに壊される。それにサファイアの事を気にし過ぎだ。今のお前はサファイアの力なしで、俺と一騎打ちをしている。サファイアの事を気にしている余裕があるなら、どうやったら俺に一撃を与えられるか考えろ」

「わ、分かりました……先生」
 
ブラッドさんのきつい言葉に、カレンは辛そうに視線を逸した。
 
カレンは修行を始める前に、ブラッドさんと何かを約束したようだけど、その内容は話してはくれない。

当の本人もあまり聞かれたくないようだったから、俺も深く聞く気になれなかった。
 
だからカレンはこの二ヶ月、一度もサファイアの力を使っていない。

「次にソフィア」

「は、はい!」
 
名前を呼ばれたソフィアは、体を強ばらせながら立ち上がる。

「お前にはこの三人とは違って、まずは共振の魔力を引き出すところから始めさせた。でもまだ共振の魔力を少しずつ引き出せないせいか、魔法の威力が中途半端になってしまっている」

「そ、それは……」
 
その事はソフィア自身も分かっていたのか、表情を歪めると拳に力を込めた。

「まあ、でも良く引き出せている方なんじゃないのか?」

「えっ……?」

「さっきも言ったけど、俺は共振の力がどういう物なのか知らない。それにお前は二ヶ月前まで、雫が不安定だった事もあってろくに魔法を使えなかったんだ。だから正直、お前の実力がどれ程の物なのかは、今のところハッキリと言う事が出来ない」

「そう、ですか……」
 
その言葉にソフィアは顔を伏せる。

しかしブラッドさんは、そんなソフィアに近づくとそっと頭に手を置いた。