✭ ✭ ✭

「――っ!」
 
俺はオフィーリアの居る洞窟に張った、魔法陣が発動した事に気がついた。

そして慌てて忘却の山がある方へと振り返る。

「……まさか」
 
誰かがあの洞窟へ侵入した?! 

しかし魔法陣は発動しても、魔法の方が発動した気配は感じなかった。

俺が張った魔法陣に気づいて逃げたのか?

いや、その前にあそこには目くらましの魔法を張ってある。

それをどうやってかい潜ったと言うんだ!?

「ブラッドさん? どうしたんですか?」

「えっ……ああ、何でもない」
 
俺は忘却の山から目を逸して、アレスたちへと目を戻す。
 
オフィーリアの体を包み込んでいる氷の水晶には、サファイアの氷結の力が働いている。

だから滅多な事がなければ、あの氷が壊れる事はない。
 
本当なら今直ぐにでも行って、様子を見に行きたいところだけど、今はここから離れるわけにはいかない。
 
変にここを離れてしまったら、ソフィアの使い魔のテトは必ず、俺に疑いの眼差しを向けてくる。

当然、エクレールだってそうだ。
 
あの二人はどうやら、俺の事を疑っているようだからな。

「……」
 
もしオフィーリアの存在を誰かに知られてしまったとしても、彼女の胸元にある星の涙にはもう魔力がない。

今更そんな物狙ったって何の得にもならない。
 
だが……。

「俺の許可もなく勝手に入ったんだ。後で覚悟してもらうぞ!」
 
俺は小さくそう呟いたあと、アレスたちに向けて口を開いた。