【これでは彼を誘き出す餌の意味がなくなってしまう】
 
あの言葉の意味はいったいなに? 

私を餌にして……ブラッドを誘き出すつもりなの?!
 
また……私のせいで彼が傷つく事になる。

そんなの……いや!

もうブラッドが傷つくところなんて見たくない!

ブラッドはずっと私なんかのためにその身を犠牲にしてくれた。

私を守るために命を張ってくれて、あの時の約束を果たそうとしてずっと自分を偽ってきて、決して救済されようとしないで、一人で居る事を選んでしまった。

それも全て……私のため。

この声を届けたくても、今の私の声が彼に届くことなんてない。

もうやめて! 私なんかのために傷つかないで! そう叫びたいのに、私の体は言うことを聞いてはくれない。

私の声を……ブラッドへと届けてはくれないんだ。

「……ド」
 
キーンと言う音が高くなり、頭を抱えたい衝動に駆られる。

「……ッド」
 
そして意識を手放す最後、キーンと言う音は私の頭の中で弾け飛んだ。

「――っ」
 
目の中から光が失われ、私はまた深い暗闇の中へと落ちていく。

でも――

「……ラッド」
 
意識を手放す直前、私は最後に声を振り絞って。

「ブラッド!」
 
力強く彼の名前を呼んだ後、再び意識を手放した。