後ろに居た彼女は慌てた様子で、ミカエルの側に来ると彼の前に立った。

「ウリエル。そう慌てなくても大丈夫ですよ」

「し、しかしこれはあいつが仕掛けた罠です! いったいどんな魔法が発動するのかも分かりません」
 
ウリエルと呼ばれた人の言葉に、ミカエルは数秒考え込むと二、三度頷かせてみせた。

「分かりました。私も死にたくはありませんからね。なので、ここからでも構いません」

「?」
 
彼の言葉に首を傾げた時だった。
 
ミカエルはウリエルから離れると、私の体を閉じ込めている氷の水晶に手を翳した。

その姿に私の中で嫌な予感が過った。

「このままあなたの意識が戻っていることには、少々困る事があるんですよ。今日は本当に死んでいるのか確かめに来ただけなのですが、これでは彼を誘き出す餌の意味がなくなってしまう」
 
彼を誘き出す餌? ……まさかそれって!

「ですので、もうしばらく眠って頂けますかね? ねえ、この世界のエア様」

「っ!」
 
その言葉に目を見張った時、ミカエルの魔法が私目掛けて放たれた。

「――っ」
 
キーンと言う音が頭の中で響いた時、意識が遠のいていく。

「さあ、帰りますよ。ウル」

「はい、兄上」
 
ミカエルは立ち去る最後に不敵な笑みを私へ向けた後、ここから出て行ってしまった。

「……っ!」
 
キーンと言う音が何度も頭の中で響く。

この魔法は……いったいなに? 

頭の中がぐるぐる回って気持ちが悪い……。
 
額に嫌な汗をにじみ出て、何とか意識を保ちながら私はさっきの彼の言葉を思い出す。