ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

だが、俺は容赦することなくアムールを振り上げる。

そして水の輪ごとセイレーンをぶった斬ろうとした時だった。

「防水(ウォータープルーフ)!」
 
俺の目前にある男が飛び出すと、防水を張ってアムールを迎え撃った。その光景に俺は目を瞬かせて、直ぐにアムールを引いた。
 
そして防水を張りながら、真っ直ぐな青い瞳を向けてくる人物に、俺は見覚えがあった。

「お戯れはやめてください。もう良いでしょう、ブラッドさん」

「……まさか、お前ミーアか!?」
 
俺の目の前に居る人物、ミーアは軽く息を吐くと張っていた防水を解く。

そしてセイレーンの体を閉じ込めている水の輪に手を翳し、勝手に俺の魔法を解除した。

そしてその拍子に地面へ落ちかけるセイレーンの体を、ミーアは直ぐに抱きとめた。

「はあ……まったく、やめてくださいよ。止める俺のこと考えてくださいよ」

「あら、ミーア。わたくしは待っているように言ったはずなのですが?」

「あなたが大人しくブラッドさんのところに行っていれば、こんなことせずに済んだんです。少しは自分の行動を考えてくださいよ」
 
そう文句を言いながら、ミーアはセイレーンを下ろすと、体をこちらへと向き直らせる。

「お久しぶりです、ブラッドさん。先程はうちの姫様が失礼しました」

「い、いや……それは別に良いんだけど」
 
俺はアムールを鞘に戻して、ミーアの体を上から下まで見下ろした。

「ミーア……見違えたぞ! こんな立派に成長するなんてな」
 
その言葉にミーアは少し照れくさそうに頬をかいていた。
 
俺とミーアが出会ったのは、今からずっと前の事になる。

俺と初めて出会った頃のミーアは、まだまだ小さな子供の魚人族で、泣き虫でおっちょこちょいで、よく外の子供たちから虐められていた。