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おいおい……こんな時に、ここに来るなんて話しは聞いてなかったんだけど。
 
俺は内心で苦笑しながら、アムールを目の前に居る彼女へ構えていた。

そんな俺の姿を見た彼女も、腰にあった魔剣マールを抜くと構える体勢に入った。
 
さすがにここで魔剣同士をぶつけるのは……と思っていたが、しかしこれはこれで良い機会だとも思った。
 
アレスたちはまだ、直接魔剣同士の力がぶつかり合っているのを見た事がなかった。

その事にも目の前に居るセイレーンも気づいていたようで、俺に便乗するかのようにマールを抜いて見せた。
 
そして相変わらず、マールの刀身は美しい物だった。

太陽の光によって照らされる刀身は、海の宝石と呼ばれる【アクアマリン】のような輝きを放ち、この俺ですらも初めてマールの刀身を見た時は息を飲んだ。
 
きっと昔の俺だったら、絶対に狙っていた宝石の一つになっていただろう。
 
と、そんな事を考えていた時、最初に動いたのはセイレーンだった。
 
彼女は真っ青な瞳を嫌らしく細めると、俺との距離を縮めてマールの刀身を振り下ろす。

その行動に直ぐに気づいた俺は、右へと避けて地面を転がり、体制を立て直しながら立ち上がった。
 
そんな俺の行動は想定内だったのか、立ち上がった時には既に、俺の回りを水の魔法陣が包囲していた。

「ほんと……毎度思わされるけど、嫌らしい戦い方するよな!」
 
しかしそれに遅れを取る俺ではない。
 
俺は右手を前に構え、神の守りを張った。そして直ぐに地面に手を付く。
 
そして俺の回りを包囲している水の魔法陣の上に重なるように、黄色い魔法陣が姿を現す。

セイレーンが魔法を発動したと同時に、俺も魔法を発動する。