「ブラッドさん?」
 
そして右腕を広げて、私たちに下がるように指示を出した。

「アムール」

「……」
 
アルさんの名前を呼んだブラッドさんの右手の中に、魔剣の姿に戻った魔剣アムールが現れる。
 
それを見届けた私たちは、エルさんたちが居る方へと下がった。

その拍子にテトが右肩に上がってきて、私たちはブラッドさんへと視線を送った。
 
ブラッドさんは目の前に居る女性に切っ先を向けた。

「どうしてお前がここに居るんだ?」

「あら? 数日前にお話したではありませんか? もうお忘れになったので?」
 
ブラッドさんの目の前に居る女性は、そう言いながら腰から下げている剣を抜いた。

そして私たちは、その剣の刀身を目にして瞳を丸くした。
 
彼女が鞘から抜いた剣の刀身は、海のように真っ青で透き通って見えた。

まるで刀身その物が海のように思えて、彼女が剣を構えると、刀身の中で小さな泡が上がった。

「おい……あれって」
 
私たちの後ろでサファイアさんが何かに気づくと、レーツェルさんに確認を取るように、私たちには聞こえない声で何かを耳打ちしていた。
 
するとレーツェルさんはニッコリと笑みを浮かべると、サファイアさんに小さく頷いてみせた。

「あの……サファイア。あれって」
 
ロキの隣に居たカレンも、サファイアの側へ寄ると瞳を揺らしながら彼女の顔を見上げる。

そんなカレンを見たサファイアさんは、頭を左右に振ると言う。

「大丈夫だ。見ていれば分かる」
 
その言葉に私たちは目を瞬かせて、ブラッドさんたちへと目を戻した。