誰のためにこの力を振るうのか? ふふ、そんなの決まっているじゃありませんこと。

「今回も同じく【自分のために】ですわね」
 
それ以外にこの力を振るう目的なんてありません。
 
わたくしは自分のために、この力を振るってブラッド様をお助けするだけなのですから。

『そっか〜。セイレーンは相変わらずだね』

「安心しましたか?」

『うん!』
 
魔剣を持った者はそれぞれの願いや思いを持って力を振るう。

中には【大切な者を守るために】と言う者も居ることでしょう。
 
しかしそんなものただの戯言にしか過ぎない。
 
大切な者を守ると言っても、それもやっぱり自分のため。

大切な人を失いたくないと言う、自分の願いのために抱く考え。
 
とても素敵な考えだとは思いますが、しかし人はそれだけでは強くはなれない。
 
失ってから気づく大切な事や強さだってある。

だからこそブラッド様に勝てる者はこの世には存在しません。
 
エクレールの力を手に入れた彼でも、魔人族最後の生き残りの彼女でも、決してブラッド様に勝つことは難しいでしょう。
 
もし、ブラッド様に勝てる者が居るとすれば……それは――