それにわたくしは魚人族の長でもあり、長期間海を離れるわけには行かなかった。
 
だからわたくしは、彼とあの戦いの直後に約束を交わした。

【オフィーリア様を必ず取り戻すため、そして――】
 
という、大切な約束を――

「マール。そろそろですわね」

『うん、そうだね! でもあたし的には全員がブラッドに協力してくれたら、無駄な血を流さないで済むと思うんだよね』

「しかし、そういう訳には参りません。これは彼らにとって、大切な戦いになるのですから」
 
これはある意味この先の未来をかけた戦い。

世界が闇の中に沈む選択をするのか、それとも光で満ちた世界を選択するのか、あなた方はどちらを選択をするのでしょうか? 

「そして彼も――」
 
ずっと自分を偽って生きてきた彼も、そろそろ選択を迫られる時ではないのでしょうか? 

後悔し続けながら生き続け、誰かのために振るってきたその力で、救われた者はたくさん居たと思われます。
 
しかしそれは全て己のため――
 
己の中に住まう【強欲】のために振るってきた力。

たった一つ、【彼女が幸せに暮らせる世界を作る】という強欲のために――

『ねえ、セイレーン。一つ聞いても良い?』

「何ですか? マール」

『今回セイレーンは、いったい誰のためにこの力を振るうの?』
 
そんなマールの質問にわたくしは軽く笑みを零した。