「お前もエクレールと契約をした時に、彼女の記憶を見ただろう?」

「え、は、はい」
 
確か俺が見た記憶は、ソフィアのお母さんのエレノアさんが、エクレールさんとその彼女の側に居た、リヴァイと呼ばれた二人に、お腹に赤ちゃんが出来た事を報告している記憶だった。
 
記憶の中のエクレールさんは、とても嬉しそうに喜んでいて、そんな彼女の隣でリヴァイさんは、少し戸惑っているようだった。
 
そして一番最後に見た記憶は、エクレールさんが命を落とすところだった……。

「当然、ブラッドも俺と契約をした時に、俺の記憶を見た。そして俺もブラッドの記憶を見た。だが……」
 
アルさんは表情を歪めると、右拳に力を込めて怒りで体を震わせていた。

その様子に首を傾げた時、アルさんは言葉を続けた。

「俺が見たブラッドの記憶は、あいつが人体実験を受けている時の記憶だった」

「っ?!」
 
その言葉に俺は目を見張った。

なぜ?! どうして?! などの言葉が喉元まで出掛かるが、俺は口を噤んだ。
 
そんな俺をアルさんは横目で見た後に、視線を前に戻した。

「高い魔力を持って生まれたあいつは、その魔力を上手くコントロールする事が出来ず、子供のころはずっと寝たきりの生活を送っていた。高い魔力を持って生まれてしまったせいか、そのせいであいつの体は高熱にうなされて、夜は眠ることもままならず、最悪な時は酷い幻覚があいつを襲った」

「……」
 
その話に俺は何も言えなかった。

ただ俺の中で生まれた物は、前にブラッドさんに指摘された【要らない同情】だった。

可哀想に、きっと辛かったと思う、などの言葉が俺の中で散々駆け巡った。