確かにオフィーリアさんについて聞くなら、ブラッドさんが一番の適任者だ。きっと詳しく話してくれると思う。

でも俺はどうしても、ブラッドさんからオフィーリアさんについて聞く気にはなれなかった。

オフィーリアさんについて聞こうとしたらきっと、ブラッドさんは辛い顔をすると思うから。

「なるほど。あいつのためか……。確かに今のあいつに、オフィーリアの事は禁句かもしれないな。名前を口にしただけでも、あいつはきっと辛い顔をする」
 
アルさんはそう言うと、辛そうに表情を歪めた。

「俺がオフィーリアに出会ったのは、彼女が死ぬ瞬間の少し前の事だ」

「えっ……」

「だから彼女と一緒にいたのは、たかが数十分ってところだ。ブラッドやレーツェルのように、一日と言う時間は一緒に過ごせなかった」
 
オフィーリアさんが死ぬ瞬間の少し前って事は、彼女がブラッドさんをこの世界のトトとして認める直前!?
 
俺はてっきり、ずっと一緒に居たものかと思っていた。

「あいつは……自分のせいで、オフィーリアを殺してしまったと思っている。しかし実際は、ブラッドが彼女を殺したわけではない」

「で、でもブラッドさんは……」

「ああ、確かにあいつは自分が殺したと言っている。でもオフィーリアを殺したのは、あいつではなく【クラウン】と言う男だ」
 
クラウン……?

「クラウンという男は、道化師と呼ばれる闇魔法を使う集団を統率していた者だった。その連中の狙いが、オフィーリアが持っていた星の涙だったんだ。だからクラウンたちはエアの末裔たちを皆殺しにし、オフィーリアから星の涙を奪おうとした」
 
アルさんの話に俺は息を飲み込んだ。そして体に鳥肌を立たせる。
 
きっとそのクラウンと言う人は、己の欲望のために動く事が出来る人だったのだろう。

そう、サルワのような。