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虹の花――三百年に一輪しか咲かない幻の花と呼ばれるそれは、私たちの内に秘められる、雫の代わりにもなると言われている存在。
 
しかしそれには、魔人族特有の【蘇生の血】が必要不可欠であり、その血がなければ虹の花は決して雫になる事はない。
 
また虹の花には咲く時間が限られており、ツボミを開花させてから保ったとしても約二日程度。

だからこんな物、別に心から欲しいと思っているわけではなかった。
 
しかし【彼と彼女】には必要なものなのだ。

「兄上。準備が整いました」
 
夜空に浮かぶ満天の星空を見上げながら、私はニコニコと笑みを浮かべて後ろを振り返った。

同時に月光が部屋の中に差し込み、机の上に置かれるまだ開花前の虹の花を照らしたのだった。