『そうですね。単刀直入に申しますと、近々そちらへお邪魔いたします』

「……はあ? お前が動くのはまだ早いだろ?」
 
何でまたこっちに来るなんて言い出すんだよ? まだセイレーンが動く時じゃないって言うのに。

『わたくしが居てはお邪魔ですか? せっかくあなたのお手伝いをしようと思いましたのに』

「そんなこと言って、どうせまた人間観察がしたいだけなんだろ。それならスイレンにでも行って勝手にしててくれ」
 
そう言って強制的に会話を切り上げようとした時だった。

『虹の花』

「――っ!」
 
通話を切ろうとした指先が少し手前で止まり、俺はその言葉に目を見開いた。

「……見つかったのか?」
 
俺は顔を伏せながら、そう一言彼女に問いかけた。

すると彼女は少し間を空けてから口を開いた。

『ええ、無事に見つかりましたよ。先ほど森人族のベル様からそのように連絡をもらいました』

「それは今どこにあるんだ……!」
 
俺は声を低くして言いながら鋭い目を浮かべた。

『……近々ブラッド様がおられる街で開かれる、魔法協会主催のオークションに出品予定の品だと伺いました。なんせ三百年に一度咲く幻の花ですから、高額な取引が行われます。……ブラッド様はどうされるおつもりですか?』
 
オークションか……。

薄々予想していた事だったけど魔法協会主催となると、虹の花は今あいつが持っている事になる。

「ミカエル……!」
 
あいつの嫌な顔が脳裏を過って右拳に力を込める。
 
あんな奴に虹の花を渡してたまるか! オークションにだて出品させない!

「オークションに出品される前に俺が盗み出す」
 
俺の言葉にセイレーンはクスリと笑った。

盗みは俺の特技でもあるんだ。

だから絶対に虹の花を奪ってみせる。
 
オフィーリアのためにも! ……必ず!