母さんはいつも以上に笑顔になってくれて、とても楽しそうで俺も嬉しかった。
「マーガレットさん、これは私とアムール様からです」
母さんはアルさんとレーツェルさんの二人から、それぞれ包装された紙袋を貰うと、とても嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「では、わたくしからも」
エクレールさんは椅子から立ち上がると、胸の前で手を組んで詠唱を始めた。
「光の精霊たちよ、わたくしの呼びかけに応えたのなら、その姿を現し給え」
エクレールさんの体が金色の光をまとうと、彼女の周りに光の精霊たちが集まり始める。
そして精霊たちは彼女の頭上に集まると、一つの金色の光を作り出す。
「光の祝福を彼女の元へ――」
その言葉と同時に金色の光は弾け飛びと、俺たちの周りに金色の花びらを舞わせた。
「綺麗……」
その一言にエクレールさんは優しく微笑むと母さんの手をそっと取った。
「汝に光の祝福がありますように」
そんな三人のやり取りを、俺は少し遠くから見守っていた。
「アレスは良いのか? プレゼント渡さなくて」
「ブラッドさん?」
俺の隣に来たブラッドさんは、母さんたちの方を優しく見守るように見つめていた。
「プレゼント渡すなら今だと思うけど?」
「あ〜、俺は良いんですよ。当日渡す予定なので」
「そうか?」
ブラッドさんは軽く首を傾げると、部屋から出て行こうとする。その事に気づいた俺は、直ぐにブラッドさんを呼び止めた。
「ぶ、ブラッドさん!」
「ん?」
ブラッドさんは階段を登り掛けると、俺の方へ体の向きを直す。
「あの、ありがとうございました。あんな楽しそうな母さんを見るのは、凄く久しぶりだったので」
父さんが死んでから、女手一つで俺を育ててくれた母さんには、辛いことや迷惑を掛けてしまった事がたくさんあった。
父さんが死んだ時だって、一番悲しかったのは母さんのはずなのに、母さんは父さんの葬式で泣く事はなかった。
ただずっと、父さんの死を受け止められずに泣いていた俺の背中を、優しく擦ってくれていた。
父さんの分まで俺にいっぱい愛情を注いで育ててくれた母さんには、ずっと恩返しがしたいと思っていて、もっと笑顔になって欲しいと思っていた。
だから今日の日のことは心から感謝しているんだ。
「本当に今日はありがとうございました」
俺は精一杯の感謝を込めて、ブラッドさんに深く頭を下げた。
そんな俺の姿にブラッドさんは驚いて目を見張っていた。
しかし直ぐに軽い笑みを浮かべると言う。
「アレス。お前にとってマーガレットさんは、たった一人の家族だ。だから大事にするんだぞ」
その言葉に大きく頷いて見せる俺に、ブラッドさんも小さく頷くと二階へと登っていった。
「……そういえば」
ブラッドさんには家族は居ないのだろうか?
と、ふとそんな疑問が過ったけど、楽しそうに笑っている母さんの声が耳に届いて、俺は母さんたちの方へと目を戻したのだった。
「マーガレットさん、これは私とアムール様からです」
母さんはアルさんとレーツェルさんの二人から、それぞれ包装された紙袋を貰うと、とても嬉しそうに笑顔を浮かべた。
「では、わたくしからも」
エクレールさんは椅子から立ち上がると、胸の前で手を組んで詠唱を始めた。
「光の精霊たちよ、わたくしの呼びかけに応えたのなら、その姿を現し給え」
エクレールさんの体が金色の光をまとうと、彼女の周りに光の精霊たちが集まり始める。
そして精霊たちは彼女の頭上に集まると、一つの金色の光を作り出す。
「光の祝福を彼女の元へ――」
その言葉と同時に金色の光は弾け飛びと、俺たちの周りに金色の花びらを舞わせた。
「綺麗……」
その一言にエクレールさんは優しく微笑むと母さんの手をそっと取った。
「汝に光の祝福がありますように」
そんな三人のやり取りを、俺は少し遠くから見守っていた。
「アレスは良いのか? プレゼント渡さなくて」
「ブラッドさん?」
俺の隣に来たブラッドさんは、母さんたちの方を優しく見守るように見つめていた。
「プレゼント渡すなら今だと思うけど?」
「あ〜、俺は良いんですよ。当日渡す予定なので」
「そうか?」
ブラッドさんは軽く首を傾げると、部屋から出て行こうとする。その事に気づいた俺は、直ぐにブラッドさんを呼び止めた。
「ぶ、ブラッドさん!」
「ん?」
ブラッドさんは階段を登り掛けると、俺の方へ体の向きを直す。
「あの、ありがとうございました。あんな楽しそうな母さんを見るのは、凄く久しぶりだったので」
父さんが死んでから、女手一つで俺を育ててくれた母さんには、辛いことや迷惑を掛けてしまった事がたくさんあった。
父さんが死んだ時だって、一番悲しかったのは母さんのはずなのに、母さんは父さんの葬式で泣く事はなかった。
ただずっと、父さんの死を受け止められずに泣いていた俺の背中を、優しく擦ってくれていた。
父さんの分まで俺にいっぱい愛情を注いで育ててくれた母さんには、ずっと恩返しがしたいと思っていて、もっと笑顔になって欲しいと思っていた。
だから今日の日のことは心から感謝しているんだ。
「本当に今日はありがとうございました」
俺は精一杯の感謝を込めて、ブラッドさんに深く頭を下げた。
そんな俺の姿にブラッドさんは驚いて目を見張っていた。
しかし直ぐに軽い笑みを浮かべると言う。
「アレス。お前にとってマーガレットさんは、たった一人の家族だ。だから大事にするんだぞ」
その言葉に大きく頷いて見せる俺に、ブラッドさんも小さく頷くと二階へと登っていった。
「……そういえば」
ブラッドさんには家族は居ないのだろうか?
と、ふとそんな疑問が過ったけど、楽しそうに笑っている母さんの声が耳に届いて、俺は母さんたちの方へと目を戻したのだった。



