それはこの世界のトトを見つけるため、そしてエアの願いを叶えるための力として、星の涙は失った魔力を貯めていった。

星の涙……つまり、その持ち主であるオフィーリアさんが、【この人がトトです】と認めた時、星の涙はエアの願いを叶えたと判断して、今度こそこの世界から消滅してしまった。

でも……それと同時にブラッドさんは、オフィーリアさんを失ってしまった。

きっとブラッドさんは、この世界のトトになる気なんてなかったと思う。

誰だって心から愛した人を失いたくないと思うのは当然だ。

だからブラッドさんは……今も苦しんでいるのかもしれない。自分のせいで、愛した人の命を奪ってしまったことに……。

そう思うだけで胸が強く締め付けられた。

「これはレーツェルちゃんたちから聞いた話しなので、本当のことはわたくしにも分からないのですよ。彼らが大変だった時に、わたくしはあの島で眠っていたのですから」

エルさんは苦しそうに表情を歪めた。

「エルさん……」

「少しでも彼の力になれたかったことは、心苦しくもあり悔しい気持ちにもなるのです。もっと早くに目を覚ましていればと、何度も思ったのですよ」
 
その言葉に私とアレスは顔を見合わせて、同じタイミングで視線を下げた。
 
それを言うなら私たちも一緒だ。

私たちの知らないところで色んな事が起きていて、もっと早くに知る事が出来ていれば、ブラッドさんの力になれていたのかもしれないのに……。

「……星の涙について、わたくしが知っているのはこれだけなのですよ。エア様の願いを叶えたという事は、星の涙はもうこの世に存在しないのですから」
 
きっと今も星の涙がこの世に存在していたら、誰もがその力欲しさに争いが引き起こされていたかもしれない。

だったらそんな物、なかった方が良いと思うほうが良いのかもしれないけど、私はそう思う事が出来なかった。