そこには星の涙のことや、エアの末裔たちのことも詳しく書き記されていた。
 
エアの末裔――エアの血を引く者たちと呼ばれた存在で、人々に魔法の知識を与えたのはトートとだと言われるが、実際に魔法を広めたのはこの一族だとも言われている。

しかしもう何百年も昔に人々の前から姿を消し、滅びた一族とも言われている。

「滅びた一族か……」

「きっと人々の前から姿を消した理由って言うのが、星の涙を守るためだったのかもしれないわね。なんせ、膨大な魔力の秘めた雫であって、エアが内に秘めていた雫なんだもの。そんな物誰だって欲しいと思うものよ」
 
テトの言葉に私は顔を伏せた。
 
どの時代でも……人は目の前に大きな力の存在があったら、欲しくて堪らなくなって強欲になり、どんな手を使ってでも手に入れようとする。

それはあの九種族戦争でも同じだったのかもしれない。
 
黒い粒子によって世界は壊されていき、弱者は死に強者だけが生きる事を許されたあの世界では、きっとたくさんの血と涙が流れた。
 
自分が、私が、俺が――生き残るために人々は力を求める。

誰もが【自分のため】だけに。
 
サルワだって自分の願いを叶えるために、私の魔人の力を使って世界を作り直そうとした。

でも結局それは失敗に終わったから良かったけど、この魔人の力もとても強いものだ。
 
サルワ以外にも私を魔人族の生き残りだと知った者は、この力を狙って来るに違いない。

私は……それがとても怖かった。
 
オフィーリアさんは……どうだったんだろう? 

「あらあら、星の涙について調べているのですか?」

「っ!」
 
すると私たちの直ぐ後ろで、エクレールさんが首を小さく傾げながら顔を覗かせてきた。

その姿に驚いた私とアレスは、それぞれ左右に避ける。
 
そんな私たちの姿に、エクレールさんはニコニコと笑顔を浮かべた。

そして自分の周りにポワポワと花を咲かせ、嬉しそうに胸の前で両手を合わせる。