ヴェルト・マギーア ソフィアと虹の花

俺が自分の強さを否定する……だと? そんなこと……あるはずないだろう!

「……確かに俺はオフィーリアを失って、自分が馬鹿で愚かだった事に初めて気がついたよ。自分の心の弱さ、自分の無能さ、そして仲間と呼べる存在が居ないと何も出来ないことにな」
 
今のあいつらに比べたら、俺は人間としてずっと馬鹿で弱い存在だった。
 
家族の仇を討つために自分の命を犠牲にしようとしたり、レオンハルトたちが居なければオフィーリアを助け出す事だって出来なかったり、ましてや俺はオフィーリアの事を忘れて三ヶ月ものうのうと普通の生活を送っていたんだ。
 
もっと俺に力があったら、もっと早くにオフィーリアに出会う事が出来ていればと、数々の後悔が俺の中で生まれた。
 
そして後悔という名の感情に自分の心が飲み込まれた時、俺は初めて気がついたんだ。
 
大切は存在、仲間と呼べる存在は、俺自身が成長するためには要らないものだという事に。

それらの存在があってしまったら、俺は必ず縋ってしまう。

同情を求めてしまうから。
 
そう思った俺はだから切り捨てた。全てを切り捨て大切な者たちとの繋がりも自ら断ち切った。

それが今の俺の強さの証だ。

誰にも頼らず仲間と呼べる存在も作らず、後悔しながら生きることを望んだ。

それこそが誰にも負ける事のない、新の強さだと信じているから。

「お前の言う通り……そうだな。人は初めて大切な物を失って気づく強さがある事を知る。そしてそれを乗り越えてこそ、新の強さを手に入れる事が出来るんだ」
 
アレスは大切な物を失った事がないから、俺の気持ちを知る事なんて永遠に訪れる事はないだろう。
 
しかしミカエルは必ずソフィアを殺そうとする。

そして目の前でソフィアを失った時、アレスは初めて知る事になるんだ。

自分の愚かさと無能さ、自分がとても弱い存在だと言うことに。
 
もしそれが少し早まるんだとしたら……。