「いつもみたいに
 龍兄が一人でその子を見に行ってさ
 サクって声をかければいいじゃん」


「は?
 無理に決まってんだろ?

 もう半年以上
 声なんかかけられなくて
 木の上から見ているだけなんだからさ」


 龍兄……

 あなた
 間違いなくストーカーですよ……


 忍者の術で
 自分の気配を消せるからいいものの。

 誰かに見つかっていたら
 間違いなく警察に
 通報されていたからね。


「桃、その子に聞いてきてくれよ。
 『彼氏いる?』とか
 『どんな男がタイプ?』とかさ」


「だから、私には無理だって。

 私がその子に近づいたら
 『睨まれた~ 怖~い!!』とか
 言われて
 逃げられちゃうからね」


「そこはさ、笑えよ。
 十環には普通に笑ってるじゃん。
 その子のことを、十環だと思ってさ」


 龍兄の頭の中。 
 どうなっているわけ?


 女の子の顔を見てさ
『私の彼氏だ。ニコっ!』って
 笑えるわけないでしょ!