珍しい。

 
 いつも、龍牙さんの傷を
 あえてえぐるような姉さんが。
 龍牙さんに優しくしているなんて。


 父さんも母さんも
 いつもと違いすぎる姉さんの行動に
 動揺しているみたい。


 龍牙さんはビックリしたらしく
 滝のように流れていた涙が
 ぴたりと止まって
 ボソリと呟いた。


「小百合……なんだよ……」


「もう、龍。
 十環を責めても
 しかたがないでしょ」


「だって、俺……
 あの子のこと……
 マジで好きだったから……」


「わかってるから。
 龍がその子に本気だったってことは。

 でもさ、虎くんの彼女を
 取るわけにはいかないでしょ?」


「……そうだけどさ」


 なぜかいつもより女王様モードが
 半減している姉さんを見て、
 父さんと母さんが
 部屋の隅でコソコソ話を始めた。


 あの二人。

 いつもニコニコしていて
 本当に優しい人たちだけど。

 絶対に何かを企んでいる。


 その企みが何なのかは
 演技がかった父さんと母さんの発言で
 明らかになった。