「十環!!
 お前は本当に酷い奴だよな。

 この前だって俺はお前のために
 頬を殴らせてやったのにさ。
 それなのに……」


「龍牙さん
 あの時のことは感謝していますから」


「俺に感謝してる奴が
 あんなこと言うか?

『龍牙さんの恋、完全に終わってますよ』
 って、酷すぎだろ?

 俺のか弱い心臓に
 思いっきり日本刀を突き刺しやがって。

 それに俺さ
 十環に何度も相談してきたよな。
 旗振りしている女の子のことが
 好きで好きでたまんないんだけどって」


 何回も聞きましたよ。

 龍牙さん、
 俺に会うたびに
 しつこいくらい言ってきたから。


『天使みたいに笑顔が可愛いくて、
 あの子の抱き枕が欲しい』とか


『俺もランドセル買って
 子供たちと
 あの横断歩道を渡りたい』とか。


 俺以外が聞いたら
 『こいつ、罪を犯しそう』って
 思われかねないくらい
 危ない発言を連発してたし。
 

「だってあの桃ちゃんがですよ。
 俺に電話で
『十環先輩、助けて』って言ったんですよ。

 そんなかわいいこと言われたら、
 助けてやりたいって
 思うじゃないですか?
 桃ちゃんのこと」


「あ~!!
 やっぱり十環は、俺より桃なのかよ。
 俺が失恋で傷ついてるのに
 ノロケはやめろ!!!!」


 どう声をかければ
 龍牙さんが泣き止むのかわからず
 困っていると
 小百合姉さんが
 龍牙さんの頭を優しく撫でた。