座って泣いている
 龍牙さんの周りには、
 龍牙さんを優しくなだめる
 俺の父さんと、母さん。


 そして、女王様みたいに上から目線で
 龍牙さんにつっかかる
 小百合(さゆり)姉さんが。


「龍牙くんの気持ち、僕にもわかるよ。
 本気で好きだったのに、辛いよね」


 お父さん。
 あなたは龍牙さんの父親ですか?


 そう言いたくなるくらい
 お父さんは龍牙さんに甘い。


 今日だって
 龍牙さんが生気を吸い取られた
 ミイラみたいにフラフラな状態で
 我が家に来たからって、
 自営の写真館を閉店にしてまで
 龍牙さんの傍に寄り添って。


 そして、父さんと同じように
 龍牙さんに極甘な母さん。


「その子も
 もったいないことをしたわね。

 龍牙くん以上にカッコいい男性なんて
 この世の中にいないって
 私は思うわよ」


 そう言って、龍牙さんの背中を
 優しくさすり続けている。


 その時
 一人ダイニングテーブルに座って
 他人事のように龍牙さんを見ている俺に
 龍牙さんが牙をむいた。