「ただいま。
 あ、虎兄。
 龍兄って家にいる?」


「朝から見てないけど」 


「まだ帰ってないんだ。龍兄」


「桃さ、今朝
 清香に声をかけたんだって?」


「え? あ……と。
 たまたま学校に行こうかなって
 歩いてたら
 清香さんがいてさ」


「清香が旗振りやってるところって
 お前の学校と方向が真逆じゃん。

 それにさ、清香の顔なんて
 桃は知らないだろ?」


「それは……」


「お前、もしかして。
 俺の彼女がどんな奴か気になって、
 勝手に俺の部屋に入って
 卒アル見たとか?」


「虎兄の部屋なんて
 勝手に入るわけないじゃん」


「じゃあ、どうして清香の顔
 知ってたんだよ」


「あ~。もう。話すよ。
 龍兄に頼まれたの。

 龍兄が半年前から好きな子がいて
 小学生のために旗振りをしているから
 彼氏がいるか聞いて来てって。

 声をかけて
 私の方がびっくりしちゃったよ。
 まさか
 虎兄の彼女なんて思わなかったんだもん」


「龍兄が好きな子って……
 清香だったのかよ」


「だから私も、驚いたんだから」