インターフォンを押してすぐ
 玄関のドアが開き
 十環先輩のお母さんが出てきた。


「龍牙くん、桃華ちゃん、いらっしゃい。
 さあさあ、あがって」


「おばさん、今日は玄関でいいよ。
 桃華がさ、おばさんに伝えたいことが
 あるって言うからさ」


「フフフ。
 桃華ちゃんが私に伝えたいことなんて
 何かしら。
 二人とも、とりあえず上がって」


 こんなに家に上がることを
 勧められているのに、
 龍兄はブスっとしたまま
 玄関に立ち尽くしている。



 もう! 
 龍兄は頑固なんだから!!



 小百合さんのことが
 気になりだしたんでしょ?


 『奥手男子の必勝アプローチ』って
 タイトルの恋愛本を
 読んだんでしょ?


 本で吸収した知識を使う
 絶好のチャンスなんだから。
 今日は。