エレベーターへ向かう廊下で、昴くんに呼び止められた。


 彼は走ったのか、息を切らしている。


「…大丈夫?」


「ごめん、ちょっと逃げてたから」


 あっ…なるほど。
 
 女の子たちから逃げてたんだね。

 
 暑かったのか、こめかみのあたりに少し汗が浮き出ている。


「かっこいい……」

 無意識にそう口にしていた。


「えっ?」

「えっ、あ、や…なんでもないっ!」


 シーン…と沈黙が流れる。

うぅっ…。気まずい。


「ええっと…。昴くんはどうしてここに?」


昴くんはちょっと目を逸らしたあと、恥ずかしそうに首の後ろに手をやった。


「…前に話してた、一緒に図書館行こうってやつ。日程聞きたいなって」


……あっ、そういえば。

結構前の話だったのに、覚えてくれてたんだ。


「うん。私はいつでもいい…よ」

「じゃあさ、明日は大丈夫?
無理だったら別の日でもいいけど…」


明日は何も無いよね。梨々ちゃんとお出かけするのもまだ先だし。


「うんっ。大丈夫」