改めて、豊川さんが持つ力に比べて、まだまだ僕は足下にも及ばないと実感させられる。


「星野君はアイドルの追っかけ経験はありますか?」


「いえ全く・・。」


「私はあります。」


「え!!?」


「冗談ですよ。」


「・・冗談言うなら、ちゃんと分かるようなテンションで言ってください。」


「大した話ではありませんが、坊主君が茶髪君のことを“同志”と表現してました。」


「あぁ~・・そう言えば、
茶髪君も同じでしたよ。

『俺達は同志だ』って。」


「アイドルファンの心理は分かりませんが、ファン同士の結束も固いのでしょうか?」


「あ、そう言えばももいろクローバーZっていうアイドルがあるんですけど、

彼女達のファンは“モノノフ”と称されたり、

サカナクションっていうバンドのファンは“魚民”と称されたり、

ファンの呼び名が決まってる事があります。」


「そこです。」


「え・・・?」


「もしfi☆veのファンの皆さんも同様に、
総称する言葉があるのなら、

ウィキペディアに載っていてもおかしくありません。」


「・・・・・・・。」


「しかし、一言もそのような話はありませんでした。

つまり茶髪君や坊主君の中だけで、

自分達のことを“同志”と呼び合っているという事になります。」


「それが何か・・?」


「いえ、特に何もありませんが、
気になっただけです。

“友達”、“仲間”、“相棒”・・様々な固有名詞がある中でわざわざ“同志”を選ぶとは。」


「・・・あ、居た。」


事件現場にはいなくて、
どこにいるのかと探し回っていると、

自宅前で佇んでいる坊主君を発見した。