先輩と出逢わなければ今頃は手元になかった、灰色の猫のキーホルダーが、愛おしくてたまらない。


「他人行儀」
「へ?」
「先輩って呼び方。よそよそしい」


よそよそしい……?


後輩が先輩のこと、先輩って呼ぶのはフツウでは?


「ユキって呼んで」


みゆきのミを抜いて、ユキ。


「ユキ、さん……?」
「なに。モモ」
「……っ、え?」


呼んでと言われたから、呼んだんだよ。

なに――って言われても困るよ。


というか、さっきから

ナチュラルに呼び捨てにされているのが


……うれしすぎる。


「タオル。よかったらこのまま使って」


そう言うと、ユキさんが、先輩たちの元に戻って行った。