どうして捨てられないんだろう。
私は少しの不満を覚えながらお風呂に入り、歯磨きをしてテレビを見ていた。
そうしていると、プルルルルル……という機械音が聞こえた。
受話器をとると、いつもの綺麗な声が聞こえた。
「こんばんは、紗楽。元気?」
いつもマメに電話をかけてくれるのはこの人くらい。
「こんばんは、夜さん。いつも通り、です」
あ……これやっちゃったかも…。
夜さんこと、紫月 夜さんはこの家を貸してくれている張本人だ。
事情も今1番知られている人。
そして……めちゃくちゃカンが鋭くて、察しがいい。
「ん?何もないようには聞こえなかったけど」

