それなら乗せなければいいのに、という言葉は飲み込んで。
「……片瀬、です」
私がボソッと呟くと千歳さんはこちらをちらっと見て、少し微笑んだ。
そんな微笑みにふと誰かを連想しそうになったけど、すぐにかき消した。
「わかった、片瀬さんね。行こっか」
……どうして名字だけなのか、聞かないんだ。
まぁこちらにしたらそっちの方が都合がいいけれど。
「…はい」
この人にもバイクに乗せたくないとか、一定のこだわりはあるんだ。
やっぱり気軽に乗せる気にはならないあたり、少し暴走族の血を感じるけど……。
って、私には関係ないんだから!

