1%の神才

 冬戦争。



第二次世界大戦の勃発から3ヶ月目にあたる1939年11月30日に、ソ連がフィンランドに侵攻した戦争である。



シムナは予備役兵長として招集、フィンランド国防陸軍第12師団第34連隊第6中隊(通称カワウ中隊)に配属され、故郷の町に近いコッラー川の周辺での防衛任務に就いた。



同第6中隊の指揮官は、フランス外国人部隊勤務経験を持ち「モロッコの恐怖」と綽名されたアールネ・ユーティライネン中尉だった。


ユーティライネン中尉は、民間防衛隊での射撃成績等から判断し、幸いにもシムナを特定の小隊に配属せず、最も能力を有効に発揮できる狙撃兵の任務を与えた。



平均気温-20℃から-40℃という酷寒の中で、シムナは純白のギリースーツに身を包んで狙撃をし続けた。



その心はやれと言われたことを、可能なかぎり実行するまでだとシムナは思っている。



そう思ってはいるが、シムナは昔と同様に死にたくはなかった。


そのために確実に当たると確信したときだけ撃った。方法は簡単だ。


死神が口を出さなかったときだけに撃てばいいのだ。



さらにはシムナはスコープをつけなかった。


シムナはモシン・ナガンM28を使用し、それには3.5倍から4倍の倍率を持ったスコープが装着できたのだが銃身に付いた鉄製の照星と照門のみで狙撃を行った。



これは、シムナの猟師時代からの射撃姿勢への慣れと装備の軽量化に加え、スコープのレンズによる光の反射で位置を悟られるのを防ぐためだ。



実際にシムナは一日中相手軍を見張り、相手のスコープが反射したことにより気づき撃退した。


そうして毎日を過ごしていたら気がつけばシムナは500人以上の戦果を持っていた。今日も今日とて一日中相手軍を見張りをしていると死神が話しかけてきた。



「よお、今日も絶好調だな!"Белая Смерть"(ベーラヤ・スメルチ)君。」



「はあ?なんだそれ。」



「相手軍がお前さんにつけた異名だ。立派な名前つけてもらいやがって。」



「一体どういう意味だよ。私はロシア語詳しくないぞ。」



「“白い死神”って意味だ。」



死神、その異名はまるで隣にいるやつのことを指しているようで、誰か見えているやつがいるのではないかという不安に襲われつつ、自分のことなのに自分のことを言われていないようで癪だった。



その事に八つ当たりするようにシムナは引き金を引いた。


相手は300m離れているのにもかかわらず、シムナはヘッドショットを決める。


「チッ」


「あーもーまた機嫌悪くなりやがって。てかよく身長約152cmと小柄なのに120cm以上あるこの銃を手足のように自由に扱うよな。」



そういいながら死神は目を細めシムナの頭を撫でた。