久々に身だしなみに気をつけて向かった待ち合わせ場所は、白藍総合病院も近い横浜駅の地下街入り口のゲートだ。こんな格好で誰かを待つのは、慣れなくてものすごく緊張する。

 約束の十一時よりだいぶ早く着いてしまい、私は彫刻のごとくカチコチになって立っていた。

 こんな調子じゃ、先生と歩くことすらままならない。リラックスしないと……深呼吸しよう、深呼吸。

 古典的な方法で息を吸ったり吐いたりしていると、前方からこちらに一直線に向かって歩いてくる男性に気づく。

 明神先生だ。今日は羽織った綿麻シャツを袖まくりした爽やかなスタイルで、普段よりもこなれた感じがする。

 人混みの中でもひとりだけ際立って見えるのは、彼の優れた容姿のせいか、私が恋をしているせいか。

 私はピシッと背筋を伸ばし、目の前にやってきた彼に「こんにちは!」と九十度のお辞儀をする。

 挨拶が元気すぎるけど、今日はどもらなかったから幸先がいい。と、ポジティブに考えて頭を上げれば、彼はいつもに増して表情を穏やかにして、ラフな前髪の下の瞳で私を捉えていた。