確実におかしいと思うも、久夜さんはそれより私が過呼吸になった原因が気になっているようで、心配そうに問いかける。


「過呼吸は強い不安や緊張を感じたときに起こるんだ。……なにかあったのか?」


 思い当たる節はいくつもあり、ギクリとする。どれもとても言いづらいし、もし打ち明けられるとしても、なんだか喉の調子がおかしいから伝えられないかもしれない。

 口を閉ざして動揺から目を伏せる私に、察しのいい久夜さんは優しい口調で言う。


「悪い、今は話したくないよな。とりあえず休もうか」


 きっと気になって仕方ないだろうに、追及しない彼の心遣いが胸を締めつける。でも、今はひとりになりたいのも事実。

 こくりと頷くと、彼は私を軽々と抱きかかえて寝室へ運んでくれた。ベッドに寝かせ、私の頭を撫でて微笑む。


「伊吹は明日休みだろ? 朝もゆっくりしていていいから。おやすみ」


 とことん甘い彼に感謝と申し訳なさでいっぱいになりつつ、〝おやすみ〟と口にしてみた。

 しかし、やはり囁き声しか出ない。ひとことだし、声に関しては久夜さんは特に気にせず部屋を出ていったが、私の中にはまた別の不安が広がっていく。