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翌日、ふじ乳業を名乗る女性から電話があった。

今夜、お詫びに伺いたいと。

私は帰宅時刻である19時を指定した。



私が帰宅して10分後、アラームで計ったかのように19時ちょうどに玄関のチャイムが鳴った。

インターホンで確認すると、玄関に立っているのは、あの時の男性だった。

私は、ドアを少しだけ開けて様子を見る。
隙間から冷たい風が吹き込み、上着を羽織って来れば良かったと後悔した。

「こんばんは。宇佐美 菜穂(うさみ なほ)様で
 いらっしゃいますか?」

穏やかな優しい声は、あの時と同じだった。

「はい」

「わたくし、ふじ乳業の藤谷と申します」

藤谷と名乗るその男性は、半開きのドアから名刺を差し出す。

私は首を傾げながらそれを受け取った。

あれ? プロのカメラマンじゃなかったの?

そう思って名刺を見ると、肩書きには広報部長と書かれている。

え!? この人、いくつ?
30過ぎかと思ってたけど、違うのかな?

「今回、イメージにぴったりだと思い、
 あの時の写真を使用させていただき
 ました。ご迷惑でしたでしょうか?」

優しい物腰に、つい大丈夫ですって言いそうになる。

「当たり前です。
 私はモデルでも芸能人でもないんですよ?
 それが突然、街中にあんな大きなポスター
 貼られて、困ります」

「そうですよね。そうおっしゃると
 思ってました。分かってます。
 だけど、こうでもしないと、もう一度君に
 会えないと思ったから…… 」

え? 今、なんて?

「どうしても君に、
 もう一度会いたかったんだ」

「どうして…… 」

あの時、何があったわけでもない。

私はただ剛士(つよし)を思って海を眺めてただけ。

その姿を勝手に写真に撮って連絡先を聞かれた。