冷酷姫に溺れて。

「入井くんっ!入井くん!!!」

霜月さんが心配しているようだった。

好きな子に心配かけるとか俺、ダサすぎ。





圧倒的に血が足りてない。

ダメだ、血が無さすぎて何も出来ない。

それに目の前の霜月さんを俺の身体が狙ってる。

『血を吸え』って言ってる。

「入井くん?」

俺の牙が鋭くなった。

「…霜月さん、俺から離れて……」

「なんで?」

「血が……足りてなくて、このままじゃ…霜月さんを襲いそうで…」

霜月さんはいきなり制服のジャケットを脱いだ。

「私の血でよければ……吸って」

俺は霜月さんに覆い被さると、首もとを噛んだ。

「……んっ、……んん、ぁ…っ」

相当痛いらしく泣いているように見えた。

俺はそれどころじゃなくて、無我夢中で血を吸っていた。

「…んんっ……あっ…ん、っ」

霜月さんの血は綺麗で旨かった。

優しさが滲み出ていて、一生吸ってられる。




我に返ると恥ずかしくなった。

「ごめん、怖がらせて」

「大丈夫、それに入井くんだから怖くないよ」

霜月さんは俺のために笑ってくれた。

吸血鬼の吸血は痛いらしい。

母さんが言うには頭がぼーとして、父さんのこと以外考えられなくなるみたいだ。

「…体調はよくなった?」

「霜月さんのお陰で貧血じゃなくなったよ!本当にありがとう」