「入井くん」
目を開けると、霜月さんがいた。
「…霜月さん」
「入井くんがいなくて探してたの。なんでここにいるの?やっぱり具合が悪いんじゃ…」
「寝不足だから心配しないで」
俺は立ち上がって帰ろうとした。
「嘘、つかないで…」
霜月さんに腕を掴まれた。
「本当は先輩に何かされたんでしょ?」
声は震えていた。
「…心配ぐらいさせてよ」
「……変な薬飲まされたんだ。それから貧血で目眩と倦怠感がする」
「…そんなっ……私のせいで」
霜月さんは床に座り込んでしまった。
「霜月さんは悪くない。俺が油断してただけだ。だから、気負いしないで」
「…でも、でもっ!」
「霜月さんを守るから…そんな弱い男じゃないから」
霜月さんの瞳から大粒の涙が溢れた。
「…入井くんはなんでそこまでしてくれるの?」
霜月さんが好きだから。
そう言おうとしたとき、声が出なかった。
そして、俺は床に倒れてしまった。



