「…何度もありがとう」
霜月さんの手は震えていた。
俺は震える手をぎゅっと握った。
「そんな一人で抱え込まないでよ。
霜月さんは一人じゃないから」
「うん…」
多分、霜月さんは何でも我慢するタイプなんだ。
辛いときに辛いって言えない人なんだ。
「それにしても寒いね。何か飲もうか」
カフェに行けたら良かったんだけど、泣いてる霜月さんを連れていくわけにはいかないから。
「俺が買ってくるよ」
「うん」
公園の自動販売機で温かい飲み物を選ぶと霜月さんが座っているベンチへ急いだ。
「これでよかった?」
「うん、ありがとう」
鼻に雪が落ちた。
「降ってきたな」
「本当だ、雪が降ってる」
霜月さんは手のひらを擦り合わせ、はーはーと息をかけた。
「寒い?」
「少しね」
俺は自分のマフラーを霜月さんの首にかけた。
「え!いいよ。入井くんが寒くなっちゃうよから」
「気にしないで。こう見えても冬に強いからさ」
こうでも言わないと、霜月さんが風邪引くかもしれないし。



