冷酷姫に溺れて。



「俺はお前なんかに人生を壊させない。
それに霜月さんは俺が守るから、指一本触れんじゃねぇぞ」

会長はいつもみたいに笑っていた。

「そうですね。指一本触れることが出来るように頑張りますね。
待っててね、理紗ちゃん」

気持ち悪っ。

俺はコートを持ってくると、霜月さんを抱えたまま塀を飛び越えた。

父さんなら俺の気配で帰ったこと分かるだろ。



街に出ると、霜月さんを降ろした。

「ごめんね」

「いいよ。あ、それ靴ね」

コートと一緒に持ち出して正解だった。

「なんで会長の家にいたの?」

「家に来ないともっと酷いことするって言われて、仕方なく行ったの」

「なんで俺に言ってくれなかったの?」

「誰かに言ったらただじゃおかない。必ず一人で来いって脅されたの…」

「そっか…怖かったよな。
俺がいるから安心して」

霜月さんの目から大粒の涙が溢れた。

我慢してたんだろうな。

手をロープで縛られて怖くないはずがない。

「他に何かされた?」

「ううん。何もされてないよ」

「それならよかった」

俺は霜月さんの頭を泣き止むまで撫で続けた。