冷酷姫に溺れて。

会長は霜月さんの髪を触った。

「汚い手で触るな」

「僕の手は綺麗ですよ」

そういうことじゃねぇよ。

「ああ、僕の可愛い理紗。僕から離れてはいけないよ。
あの男は理紗を騙している。
だから、君は僕のそばにいなさい。それが一番安全だ」

なんだ、この催眠術みたいなセリフは。

霜月さんはぐったりしていて、抵抗出来ないようだ。

「ねえ、理紗。聞こえてるのなら返事ぐらいしてよ」

「……私は入井くんの言葉信じてるから」

「僕が正しいことを分からせてあげるよ」

「や、止めてっ……んんっ」

無理矢理キスされていた。

霜月さんは足をばたつかせ、抵抗しているが会長は無視している。



俺は会長を思いっきり押した。

「霜月さんから離れろ」

霜月さんを自分の後ろにした。

「入井くんっ……」

袖を掴まれ、びくっとしてしまった。

こんな時に下心満載のことを思っていいか分かんないけど、めっちゃ可愛い。

霜月さんが可愛すぎてやばい…。

「なんで僕の言うことが聞けなくなったんだ!前の君なら従ってくれたじゃないか!?」

会長が怒鳴ってる姿、初めて見た。

「…前の私と違うの。
入井くんのお陰で変われたの」

「そうか、お前が僕の計画を台無しにしたんだ。じゃあ、僕は君の人生を壊すことにするよ。それならフェアだろ?」



こいつ、狂ってる。

俺は霜月さんの手に巻き付いているロープを素早くほどいた。

「…霜月さん、触っていい?」

「…え、あ、うん」

俺は霜月さんをお姫様抱っこすると、吸血鬼のマントを広げた。