冷酷姫に溺れて。

会長の家は和風で長い廊下が続いていた。

「どうしたんですか?親子揃って。それにしても似てますね」

「そうか?なんか、息子が会長の息子に会いたいって言うんだ」

「そうだったんですか。勝人(まさと)なら、風邪を引いたらしく自室で寝ていますよ」

嘘っぽいな。

会長って勝人って名前だったんだ。

「…あの、女の子とかいませんでしたか?」

「さあ?僕は書斎で仕事してましたので分かりません」

「今さらなんだけどさ、会長って結婚したんだな」

「はい。入井さん、僕はもう会長ではありませんよ」

「悪い、つい癖で」

父さんたちは雑談してるし。

「ここが勝人の部屋です」

会長の部屋か。

「勝人。お客さんです。開けますよ」

「ああ」

扉を開けると会長が寝ているだけだった。

「入井くん、どうしたんですか」

ベッドの脇を見ると霜月さんのコートが置いてあった。

「会長の見舞いに来たんです。今日、学校を休んだと聞いたので」

「そうですか…ありがたいのですが、学校を休むことは良くないですよ?」

んなこと分かってる。

でも、霜月さんが心配なんだよ。