冷酷姫に溺れて。


光は彼女を見つけて、どっか行ってしまった。

誘った人がいなくなるなんて、無責任にも程がある。


そんなとき、霜月さんを見つけた。

ひとり、ぽつんと弁当を食べている。

話しかけようかな。

「俺、同じクラスの…」

「邪魔」

俺が話しかけるなり、席を立って行ってしまった。

やっぱり霜月さんの眼中にすらないよな。



「何してんの」

さっきまで居なかったはずの真優が後ろにいて驚いた。

「冷酷姫に話しかけても無視されるに決まってるでしょ?あんたバカなの?」

霜月さんはそんな人じゃないと思ってる。

みんなが『冷酷姫』だと決めつけるからだ。

彼女はそのキャラを確立するしかなかったんだ、きっと。



「何でもいいけどさ、あの子に深入りしない方がいいらしいよ」

何でだよ。

「噂だけどね、魔王と繋がってるらしいから」

魔王って母さんの口からよく聞く「大雅くん」って人だよな?

なんでダメなんだよ。

「なんでって顔してるけどね、ダメなもんはダメなの。
千影が危ない目にでも遭ったらどうするの?
ほら、魔界人は危ないって聞くしさ」